遅ればせながら、映画「怒り」についての感想。人間の内面的な葛藤を描く重厚なドラマ。
映画「怒り」について
前回の更新から、またまた1ケ月以上が過ぎてしまった。
そして、公開からかなり時間が経過しているが、今さらながら映画「怒り」に
ついて書いてみたいと思う。映画を観たのは9月ですが・・・(;'∀')
主役級の豪華なキャストに、音楽も坂本龍一を起用するなど、公開前から
話題性も高く、観た人も多いかもしれませんが・・・。
映画のあらすじはざっくり書くと、東京・八王子で起きた夫婦殺害事件の
犯人が顔を整形し逃亡を続けていたが、1年後、東京、千葉、沖縄で素性の
知れない3人の男が現れて・・・といった3つの物語が紡ぎ出されていく。
犯人は誰か?といった謎解きよりも、登場人物の内面的な部分に焦点を
当てている。
はっきり言って、キャスティング目当てで観に行くとキツイかもしれない。
ポップコーン片手に気軽に観る映画ではなく、観る側にも覚悟がいると思う。
観終わった後、しばらく放心状態になり、何とも言えないどんよりとした
気持ちになった。
李監督の演出力の凄さ
映画を観て強く感じたことは、李監督の演出力の凄さと編集の巧さだった。
これだけ華やかな人気のある役者が出演すると、そのスター性が仇になり
映画としてつまらなくなってしまうことも多いが、李監督は見事に役者の
スター性を剥ぎ取り、新たな一面を引き出していたと思う。
そして、東京、沖縄、千葉を舞台に3つの物語が並行して展開していくのだが、
場所が変わるシーンの繋ぎ目や、音の使い方が上手く、最後まで飽きさせず
見応えがあった。
怒りから見えてくるものとは?
映画では、直接的に怒りを表すことが出来ず、飲み込んでしまう人たちが描かれ
ている。そして、そこから見えてくるのが、怒りの下に隠れている不安や恐れだ。
自分の身近な人を信じたいのに、信じることが出来ない不安や、疑ってしまう
恐れは、誰でも持っている気がする。
信じることが出来なかった自分に対しての怒り、信じていたのに裏切られた怒り
そしてどこにもやり場のない怒りなど。
その怒りの下にある本当の気持ちは、悲しみなのかもしれない。
そして、人を信じることの難しさだと思う。
人間の内面的な葛藤を描く重厚な作品。観て損はないと思う。