映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」。
世界共通のテーマ
今年こそは、映画を毎月1本観ると決めつつも、なかなか実行できにずにいた。
しかし、先月は既に2本観ていたのだ。まず、3月の初めに「愚行録」を観たが、
いい意味で、後味の悪さを引きずる映画だった(笑)
そして、その後に観たケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエルブレイク』
2016年のカンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した作品で、誰もが共感
できる内容で、観終わった後にいろいろ考えさせられた。
イギリス社会の貧困、失業、格差、福祉問題などをリアルに描いているが、これは
誰でも起こりうることだと思うし、社会的弱者に対しての行政側の対応など、
どこの国でも似たようなもので、合理的でマニュアル通りである。
主人公のダニエルが、心臓病でドクターストップがかかり、仕事が出来なくなり
やむ得ず福祉の援助を受ける為に手続きをするが、複雑な制度に振り回され、
援助を受けられず、次第に追い詰められていく。
融通が利かない職員の対応や、マニュアル化したシステム、フードバンクでの
シーンなど、実際にリサーチして作っているので、リアリティがすごくある。
主演のデイブ・ジョーンズが本当にそこら辺にいる普通のおじさんっぽくて、
違和感がないほど、すごく自然な演技だった。
印象に残るシーンはいくつかあるが、特にフードバンクで空腹に耐えられず、
缶詰を開け、手で貪るように食べるシングルマザーのケイティとダニエルとの
やりとりには、胸が痛くなり、涙が止まらなかった。
本当に相手の気持ちに寄り添うことって、こういうことなんだな、と思った。
重たいテーマを扱っているが、深刻になり過ぎず、笑えるシーンもあり
その塩梅が良かった。
映画のタイトルにある「わたしは、ダニエル・ブレイク」という意味が、
ラストでわかり、その言葉が、私の胸に強く突き刺さった。
ダニエルの人としての尊厳を見失わず、弱い者に手を差し伸べることが出来る
優しさ、寄り添う心に、頭が下がる思いだった。
もし、自分が同じ状況であった場合、ダニエルのように行動できただろうか?
そんなことを思いながら、映画館を後にした。