映画好きに見て欲しい!圧倒的なスゴさ!映画「スリー・ビルボード」
脚本力の凄さを感じる作品
(C)2017 Twentieth Century Fox
公開前から、観たいと思っていた映画「スリー・ビルボード」だが、
やはり見て損はなかった。
冒頭のシーンから印象的で、見る者を一気に引き込んでいく。
ストーリーは、アメリカの田舎町を舞台に、娘を殺された母親が
町はずれの道路沿いに、3枚の大きな広告を出したことがきっかけで
思いもよらない方向へと事態が展開していく・・といった内容。
いい意味で裏切られる展開
(C)2017 Twentieth Century Fox
娘を殺された母親のミルドレッド、警察署長のウィロビー、暴力警官の
ディクソンの3人を軸に物語が展開していくのだが、とにかく脚本がいい。
見ている側の「こうなるかな?」といった予想が、ことごとく覆され
先がまったく読めない。
そして、役者陣の演技の凄さに心をわしづかみにされていく。
特に娘を殺された母親役のフランシス・マクドーマンドの演技に、心が震える。
怒り、喪失感、自責の念、後悔、孤独といった複雑な感情を目の表情で
見事に表現している。
あと、暴力警官のディクソン役のサム・ロックウェルの演技も素晴らしい。
差別主義で暴力的な憎たらしい感じを全身から醸し出している。
しかし、映画を観ていく内に登場人物たちのイメージがどんどん
変わっていく。最初に思っていたイメージと違った印象を受ける
描き方をしていて、単純に「いい人」「悪い人」と分けることが
出来ないのが面白い。
怒りからは何も生まれない
(C)2017 Twentieth Century Fox
映画の中で特に印象に残ったシーンがある。
ミルドレッドと教会の神父とのやりとりで、神父がミルドレッドの行き過ぎた
行動に対して忠告するのだが、それに対しての反論が強烈だった。
80年代のロスで起こったギャングの抗争の話から始まり、カトリック教会の
子どもへの性的虐待のくだりになっていくのだが、そこには神父に対しての
尊敬の念などは全くなく、もはや教会での祈りが何の救いにもならないことが
伝わってくる。
このシーンで思い出されたのが、以前観た「スポットライト世紀のスクープ」と
いう映画だった。実際にアメリカで起こったカトリック教会の性的虐待を
暴いた記者の話だったが、まあとにかく教会の隠蔽体質がすごかった。
そんなことがあると、いくら立派なことを言われたって何も伝わってこないし
むしろ怒りを増幅させるだけだと思った。
映画を観て感じたことは、怒りからは何も生まれないってこと。
怒りは場合によっては、パワーになるが、他人や自分を傷つけ、憎しみや
暴力といった負の連鎖を生み出していくと思う。
余韻を残した、ラストも良かった。
映画好きなら、見て損はない作品だと思う。