映画「オーバー・フェンス」を観た。ささやかな希望の光に救われる。
映画「オーバー・フェンス」について
気づいたら前回のブログ更新から1ケ月も過ぎていた。
何となく日々の生活に追われ、書くネタが思いつかず、そのまま放置。
というより、書くネタを意識的に探してなかったのかもしれない。
色んなことに対して、心のセンサーの反応が鈍くなっていたのだ。
さすがにマズい!と思い始め、まずは心の感度を取り戻すべく映画を観に行った。
前から観たかった「オーバー・フェンス」。
『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く、故・佐藤泰志原作の函館三部作の
最終章にあたる本作。あらすじは、だいたい以下のような感じ。
家庭をかえりみなかった男・白岩(オダギリ ジョー)は、妻に見限られ東京から故郷の函館に戻りつつも実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。訓練校の実習と学科対抗ソ フトボール大会の練習を惰性で続けていた彼は、仲間の代島(松田翔太)に連れられて入ったキャバクラで、鳥になりたいと願う不思議なホステス・聡(蒼井 優)に出会うのだが……。
夏の函館の降り注ぐ日差しと、坂のある街並のどこにでもあるような日常。
それぞれの日常にある虚しさや、苛立ち、あきらめ、孤独などを飲み込みながら
生きていく男と女。
画面から息づかいや体温までが伝わってくるような気がした。
オダギリジョーと蒼井優の存在感のスゴさ!
オダギリジョーと蒼井優がお互いに惹かれあっていく過程は、切なくも
ヒリヒリする。とにかく二人とも役柄にピタッとはまっていた。
オダギリジョーは、人生を諦めた感じや鬱屈した思いなどが、その佇まいから
ごく自然に伝わってきて、さすが!としか言いようがない。
そして、蒼井優はエキセントリックな感じと繊細さ、脆さの中に見える強さを
憑依したかのように演じていて、魅力的で心をわしづかみにされる。
特に二人の感情が激しくぶつかり合うシーンは、観ている私自身もざわざわし、
胸が苦しくなり、切なくなった。
年を重ねていくと、いつしかうまくバランスを取ることを考えてしまう。
そうすると笑ったり、怒ったり、泣いたりする感情のセンサーが鈍くなってくる。
それって、何だかつまらない気がする。
映画の二人のように感情をむき出しにするって、人間臭くていいなって思った。
まとめ
夏の函館の風景、鳥たちが空を舞う姿、職業訓練校に通う男たち。
自転車の二人乗り、鳥の求愛ダンスシーン。印象に残るシーンが多い。
特に夜の遊園地のシーンが好きだ。幻想的で、儚くて美しい。
つながれた鎖のようなものから、心が開放されていく感じがした。
そして、ラストにささやかな希望の光を感じた。
地味だけど、愛おしい映画だ。